監修:岩田 侑城(株式会社LeapAI 代表取締役CEO)
新卒のAI研修、他社は何を教えている?実施率93.5%でも「成果が測れない」—来年変えるべき3点

新卒社員への生成AI研修は、生成AI教育に携わる担当者1,014名への調査で実施率93.5%でした。ただし全員に届いているのは4割弱で、教える内容の最多は「リスク」。しかも研修がうまくいったと感じている担当者ほど、研修設計に強い課題を抱えています。他社の水準と、来年の設計で優先して変えるべき3点を整理します。
新卒への生成AI研修、他社はどこまでやっている?
新卒社員向けの生成AI研修は、もう一部の先進企業だけの取り組みではありません。一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)が2026年9月1日に公表した「新卒社員向け生成AI研修に関する実態調査」では、2026年度の新卒社員向け生成AI研修の実施率が93.5%に達しました。

ただし、この93.5%は全企業の平均ではありません。回答しているのは、企業で従業員向けの生成AI活用の指導・教育に携わる担当者1,014名です。すでに生成AI教育を担っている人たちの間での数字、という前提で読んでください。
実施率93.5%、でも「全員対象」は38.5%
中身を見ると様子が変わります。「全員を対象に実施」と答えた企業は38.5%にとどまり、「特定の部署・業務を対象に実施」と「試験的・一部を対象に実施」の合計は55.1%でした。実施企業の半数以上が、限定的な形で始めている計算です。
つまり「やったかどうか」ではもう差がつきません。差が開いているのは「どこまで届いているか」のほうです。同じ年に入社した新卒でも、配属先によって生成AIの前提知識が揃わないまま現場に出ている可能性がある、ということでもあります。
教えている内容の最多は「リスク」49.6%
研修を実施した企業が扱った内容は、1位が「リスク」49.6%、2位が「基礎知識」48.7%、3位が「社内ルール」48.2%でした。上位3つはいずれも、使いこなすための技術ではなく、安全に使うための知識・判断基準です。GUGAはこれを、AIスキルよりAIリテラシーが重視されている傾向として整理しています。
実践的な活用力を伸ばす前に、事故を起こさないための土台を先に置く。それが今の新卒研修の標準形になりつつある、という姿が数字に出ています。
なぜ研修は「スキル」より「リスク」から始まるのか

業務で使うのが当たり前になった今、研修に求められる役割は?
背景にあるのは、業務側での普及です。総務省の令和8年版情報通信白書には、生成AIの活用方針を尋ねた設問で「わからない」と回答した対象を除いた集計として、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合が日本で86.4%だったと記されています。企業全体の利用率ではなく、白書調査に回答した企業のうち活用方針を答えられた層での割合、という条件付きの数字です。
条件を差し引いても、業務側で使う人が増えた後では、新卒研修に求められる役割は変わります。「使えるようにする」ことよりも、「事故を起こさずに使える状態にする」ことが先に来る。研修内容がリスクから始まるのは、この順序に沿った選択だと読めます。
懸念の上位は著作権・誤情報・情報漏洩
新卒社員が業務で生成AIを活用するリスクについて、「特に懸念していない」と答えた担当者はわずか3.2%でした。具体的な懸念の上位は「著作権・知的財産の侵害」45.7%、「誤情報(ハルシネーション)の鵜呑み」43.0%、「機密情報・個人情報の漏洩」42.7%です。ハルシネーションとは、AIが事実でない内容をもっともらしい文章で出力してしまう現象を指します。
この3項目は地域別・企業規模別で見ても大きな差がなく、全企業に共通する基本的な懸念になっています。裏を返せば、ここだけを扱った研修は「他社と同じことをやった」以上にはなりません。差がつくのは次の項目です。
首都圏・大企業だけ高い「シャドーAI」と「思考力低下」
地域や企業規模で差が出たのは「シャドーAIの発生」、つまり会社が把握・許可していない外部AIツールを従業員が無断で使ってしまう状態への懸念でした。首都圏(1都3県)とその他の地方では6.0ポイント差で首都圏が高く、大企業と中小企業では6.2ポイント差で大企業が高くなっています。
さらに企業規模別で最も大きな差が出たのは「論理的思考力や問題解決能力の低下」への懸念で、大企業が9.0ポイント高いという結果です。これらは使い始める前の心配事ではなく、使うことが当たり前になった後に表面化する副作用にあたります。自社の活用が進んでいる企業ほど、研修に禁止事項の周知だけでなく「どこまで自分で考えてからAIに渡すか」という基準を入れる必要が出てきます。
「うまくいった」と答えた担当者ほど悩む——AIネイティブ・パラドックスとは
AIネイティブとは、学生時代から生成AIに触れてきた世代を指す言い方です。その世代を新卒として迎えた研修現場では、担当者の手応えと不安が同時に大きくなるという、少し意外な関係が出ています。

65.4%が「レベルは高い」と評価している
研修後の新卒社員のAIリテラシーは、「非常に高い」が17.3%、「やや高い」が48.1%で、合計65.4%が高い評価でした。AIスキルへの評価も同様の傾向で、多くの企業が研修の成果を実感しています。
それでも研修内容の設計に67.7%が強い課題意識
研修の企画・運営上の課題は、全体では「非常に課題に感じている」が24.0〜28.8%にとどまります。ところが、研修後の活用レベルを「非常に高い」と評価した層では53.1〜67.7%へ跳ね上がります。とくに「研修内容の設計」では、約3人に2人にあたる67.7%が強い課題意識を持っていました。
最も手応えを感じている担当者ほど、研修そのものへの不安が大きい。GUGAはこの逆説的な事象を「AIネイティブ・パラドックス」と定義し、AIネイティブ時代ならではの新しい人材育成課題として提示しています。
なぜ高評価の担当者ほど悩むのか——考えられる説明
GUGAが示しているのは、評価と課題意識のこの関係と、課題解決の鍵として挙げた「研修担当者自身のAIリテラシー向上」と「客観的な評価基準」の2点です。ここから先は、その2点を手がかりにした読み方になります。
新卒社員の到達点が高く見えるほど、担当者は「この水準は本当に業務で通用するのか」「自分の見立ては正しいのか」を確かめる手段を必要とします。比べる物差しがないまま高評価だけが並ぶ状態は、担当者にとって安心材料ではなく不安材料になりやすいと考えられます。研修が失敗したから悩んでいるのではなく、成功したように見えるからこそ検証手段を求めている、という読み方ができます。
研修の成果はどう測られている?属人化した評価の実態

上位はトレーナーのフィードバックとレポート提出
新卒社員の生成AI活用レベルを把握する手段として上位に挙がったのは、「トレーナーのフィードバック」52.9%と「レポートや課題の提出」47.8%でした。どちらも定性的な観点が多く、誰が見るかで結果が変わりやすい方法です。「社内独自のテスト」や「外部の資格試験」を取り入れる割合は相対的に低く、企業における評価基準が標準化されていない様子がうかがえます。
前の節の「65.4%が高い」という数字も、この物差しの上に乗っています。
大企業でも4割超が「理解・習得状況を把握できていない」
同じ課題は新卒研修に限りません。株式会社イー・コミュニケーションズが、従業員1,000名以上の大企業で自社の生成AI研修を実施している責任者・担当者110名を対象に行った調査では、受講者の理解・習得状況を十分に把握できているかという問いに「全くそう思わない」5.5%、「あまりそう思わない」36.4%と、4割超が把握できていないと回答しています。研修成果が受講者の業務に活かされていると感じるかという問いにも、「全くそう思わない」2.7%と「あまりそう思わない」34.5%を合わせて37.2%が否定的でした。
研修成果が業務に活かされていないと答えた担当者(n=41)にその理由を尋ねた設問では、「受講後に業務で実践する機会がないから」と「受講率・完了率だけで評価されているから」がいずれも48.8%で並び、「受講内容を確認する仕組み(テスト等)がないから」も41.5%でした。受講したかどうかしか見ていない運用が、成果が出ない理由として担当者自身から挙げられている形です。
資格・検定への関心は88.7%
一方、GUGA調査では生成AI関連の資格・検定への関心が88.7%と高い水準でした。GUGAは、研修後のレベルを「非常に高い」と評価した層ほど、AIネイティブ世代を客観的に評価する基準を強く求めている様子だとしています。
担当者は評価が甘いことを問題視しているというより、評価の根拠を自分の主観の外側に置きたがっている、と整理できます。
来年の新卒AI研修で、まず変えるべき3つのこと
2つの調査を重ねると、次に手を入れるべき箇所はかなり具体的に絞れます。まずは自社の現状を、次の4項目で突き合わせてみてください。いずれもGUGA調査の数値なので、比較先は「生成AI活用の指導・教育に携わる担当者」の回答です。

実施の有無: 生成AI教育を行っている企業の担当者調査では93.5%が実施済み
対象範囲: 全員対象は38.5%、限定的な実施が55.1%
研修内容: 最多は「リスク」49.6%、次いで基礎知識48.7%・社内ルール48.2%
評価手段: トレーナーのフィードバック52.9%、レポートや課題の提出47.8%が上位
ズレが大きかった項目から、次の3点に沿って手を入れます。
1. 対象を「全員」に広げるか、広げない理由を決める
実施率93.5%に対し、全員対象は38.5%です。限定実施そのものは悪い選択ではありませんが、「どの部署に、なぜ先に配ったのか」を説明できないまま翌年を迎えると、配属先による知識差が現場にそのまま残ります。自社が限定的な実施を選んだ55.1%側なのかを確認し、拡大する時期を決めるか、限定を続ける条件を明文化するか、どちらかに決めておくのが先です。
2. リスク教育の次に「業務での実践機会」を設計に組み込む
研修内容の上位はリスク・基礎知識・社内ルールで、いずれも約半数の企業が扱っています。一方、大企業調査で成果が業務に活かされない理由の最上位に並んだのが「受講後に業務で実践する機会がないから」48.8%でした。
イー・コミュニケーションズ調査では、今後新たに取り入れたい・強化したい育成手法の上位に「AI活用の社内事例の共有・横展開」50.0%と「業務に直結した実践型ワークショップ」44.5%が挙がっています。研修当日のカリキュラムだけでなく、受講後に何を触らせ、どの事例を共有するかまでを同じ設計書に入れておくと、翌年の成果実感が変わります。
3. 評価を「人の印象」だけに任せない物差しを1本用意する
社内テストを作るか、外部の資格・検定を使うかは自社の運用次第です。資格・検定への関心の高さを示したのはGUGA調査ですが、公表しているGUGA自身が生成AI関連の試験・認定の提供者なので、外部資格が唯一の答えというわけではありません。決めるべきは手段より先に、「トレーナーの主観だけで到達点を判定しない」という一線を引くことです。物差しが一本あれば、来年の新卒と今年の新卒を同じ尺度で比べられるようになります。
大企業調査では、受講者の習熟度を可視化・測定する仕組みを現在実施しているのは27.3%にとどまる一方、今後取り入れたい・強化したいという回答は37.3%まで増えます。AIネイティブ・パラドックスへの現実的な打ち手は、研修内容の作り込みよりも、まず測り方を決めることにあります。
この数字はどこまで言える?社内で共有する前の確認点
回答しているのは新卒社員ではなく研修担当者
GUGA調査の回答者は、企業で従業員向けの生成AI活用の指導・教育に携わる担当者1,014名です。生成AI教育をすでに担っている層に絞られているため、実施率93.5%は全企業の平均より高く出やすい数字になります。自社の実施率が9割に届かないからといって、極端に遅れていると判断する材料にはなりません。
イー・コミュニケーションズの調査は、従業員1,000名以上の大企業で自社の生成AI研修を実施している責任者・担当者110名が対象で、調査期間は2026年6月10日〜同年6月11日、IDEATECHが提供するリサーチマーケティング「リサピー」の企画によるインターネット調査だと明記されています。社内で数字を引くときは、こうした回答者条件・人数・調査時期を、発表ページの記載どおりに添えてください。条件を外した数字は、そのまま業界標準値として読まれます。
どちらの調査も答えているのは研修を企画・運営する側で、新卒社員本人の理解度を測定した結果ではありません。「活用レベルが高い」という65.4%も、担当者による評価という位置づけです。評価が高い層ほど課題意識が強いという関係は示されていますが、どちらが原因でどちらが結果かは示されていません。
調査を実施したGUGAはどんな団体か
GUGAは生成AIパスポート試験や生成AI人材認定カードを提供する一般社団法人です。「資格・検定への関心88.7%」という数値と、「客観的な評価基準」を課題解決の鍵に置く示唆は、資格・検定を運営する当事者からの発表である点を踏まえて読む必要があります。社内提案へ引くときは外部資格の導入だけを結論にせず、社内テストや業務課題での確認といった選択肢と並べて比較してください。
3つの数字は足し算も直接比較もできない
2つの研修調査は母集団も設問も異なるため、数字を足したり直接比べたりはできません。総務省の令和8年版情報通信白書に記載された86.4%も、白書調査に回答した企業のうち、生成AIの活用方針について「わからない」以外を答えた層での業務利用割合であり、新卒研修の調査とは別のものです。
社内資料へ引くときは、「新卒研修の実態は、生成AI教育の担当者1,014名を対象としたGUGA調査」「大企業の研修運用は、110名を対象としたイー・コミュニケーションズ調査」「業務での利用は、白書調査に回答した企業のうち活用方針が定まっている層での86.4%」と、出典と集計条件を分けたまま並べてください。3つを1本のグラフにまとめた瞬間に、根拠として使えなくなります。
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出典
一般社団法人生成AI活用普及協会「新卒社員向け生成AI研修に関する実態調査」 https://guga.or.jp/2026-08-10-1100
総務省「令和8年版 情報通信白書」生成AIの業務利用 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121130.html
株式会社イー・コミュニケーションズ「大企業における生成AI研修に関する実態調査」 https://www.e-coms.co.jp/news/20260624
この記事の監修者

新卒で株式会社リクルートに入社し、HR領域のマーケティング業務に従事。2024年9月に株式会社LeapAIを創業し、生成AIによる業務の自動化とAI動画制作で企業の事業成長を支援している。事業売却の経験を持ち、戦略の設計から実行までを一貫して担う。
※本記事は生成AIを活用して制作しています。内容はLeapAI編集部がファクトチェックおよび編集を行い、 図解・画像は生成AIで作成したもの、または実際のサービス画面を掲載しています。
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